色、色、色

 黒が好きです。黒は自己中心的な色だと思います。己を誇示するのが大好きです。両極の片方を担っています。ライバルは白です。自意識過剰な上、他のものの追随を許しません。彼に触れた人は皆少なからず染められます。

 そんな黒が私は好きです。

 

 赤が好きです。命の色、情熱の色、愛の色、色々なイメージを背負って、彼らは大抵グロテスクです。チューブから絞り出したときの薄気味悪さが好きです。まるで生き物を摘まんでいるかのよう。

 

 青が好きです。潮風を感じさせるような、透き通る青が好きです。あるいは青空、あるいは深海を想起させる青。私は青の中に思いを馳せるのが好きです。そのまま飛んでいき、あるいは沈んでいくことが心地よいのです。

 

 緑が好きです。風に靡く草原の絨毯が好きです。その中を闊歩する羊たちの白も好きです。あるいは、絨毯が麦歩の黄金色になったのも好きです。

 

 結局のところ、私に嫌いな色など無いのです。それがある意味で問題であり、またある意味で黒に惹かれる私の当然の成行でございましょう。自分を頂点に据え置いて他を愛でる色、それが私なのではないかと思うのです。無論この烏滸がましい考えは自己中心的かつ自意識過剰な愚かな解ではございますが、それでも私は頭でわかっても心のどこかにこの思いが絶えずあることを知っています。"私こそが尊ばれて然るべき"と心は言うのです。その無意識の自尊心がその他大勢を"愛しい"と感じさせてくれるのであれば、それもまた喜ばしいことかもしれません。

 

 黒とは自意識過剰、自己中心的だと言いましたが、それはまた全ての責任を自分に据え置く被害者意識によるものだとも思います。"全ての不利益は当人の力不足なり"。黒にとって、その暗さが揺らぐことはあってはならないこと。不利益を被らない為に絶えず黒は自身の黒さを磨かねばなりません。黒とは、黒くあるために不断の努力を厭わない、努力の色ではないかと思うのです。

 また同時に、黒は他色の追随を許しませんから、孤独の色でもあります。

 

 私は白が嫌いです。大きすぎて、眩しいからです。